外国人の不法滞在とは?通報先・方法と企業が注意すべきリスクを解説

不法滞在の外国人を見つけて通報している男性

出入国在留管理庁(入管)の発表によると、日本における外国人の不法残留者数は、2025年7月1日時点で71,229人でした。特に東京などの大都市圏で多く見られます。

不法滞在や不法就労に関する対応を誤ると、企業側が「不法就労助長罪」に問われるリスクもあるため、外国人を採用している、または今後採用を検討している企業にとって、無関係ではないテーマです。

本記事では、不法滞在の基本から通報先・方法、さらに企業が押さえておきたい在留カードの確認ポイントや雇用時の注意点まで、実務目線で整理します。

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外国人の不法滞在とは?企業が知っておくべき基本知識

外国人の不法滞在は、企業にとっても無関係ではありません。採用や雇用管理の中で見落とすと、不法就労につながる可能性もあるため、まずは基本的な考え方を押さえましょう。

ここでは不法滞在の定義や種類、不法就労との違いについて紹介します。

不法滞在とは(オーバーステイ・不法入国など)

不法滞在とは、本来認められている在留資格や在留期間を守らず、日本に滞在している状態を指します。

実務でも起こりやすいケースとしては、次のようなものが挙げられます。

  • 在留期限を過ぎても出国しない「オーバーステイ」
  • 正規の手続きを経ずに入国する「不法入国」
  • 在留資格の更新・変更をせずに滞在を続けるケース

特に企業の実務で関係しやすいのは、在留期限が切れていることに気づかず雇用してしまうケースです。見た目では判断できないため、書類の確認が重要になります。

不法滞在と不法就労の違い

不法滞在と似た言葉に「不法就労」がありますが、意味は異なります。

不法滞在は「滞在自体が違法な状態」であるのに対し、不法就労は「働くことが認められていない状態で就労すること」を指します。

たとえば、以下のようなケースが不法就労に該当します。

  • 就労が認められていない在留資格で働く
  • 許可された労働時間を超えて働く(留学生など)
  • 在留期限が切れている状態で働く

企業側としては、不法滞在者を雇用した場合だけでなく、就労条件を超えた働かせ方をしてしまった場合もリスクになるため注意が必要です。

日本における不法滞在の現状

出入国在留管理庁の発表によると、日本における不法滞在者数は一定数存在しており、都市部を中心に確認されています。

外国人労働者の受け入れが進む一方で、不法滞在や不法就労への対策も強化されており、企業にも適切な対応が求められる場面が増えています。

特に近年は、雇用主側の責任も厳しく問われる傾向にあるため、「知らなかった」では済まされないケースもあります。採用時や雇用中の管理体制を見直すことが重要です。

外国人の不法滞在に通報義務はある?

不法滞在の外国人を見かけた場合、「通報しなければならないのか」と迷う方も多いのではないでしょうか。

結論からいうと、すべての人に通報義務があるわけではありません。ただし、立場によって扱いが異なるため、基本的なルールを理解しておきましょう。

公務員には通報義務がある

入管法では、国や地方公共団体の職員など、一部の公務員に対して不法滞在者の通報義務が課されています。

具体的には、職務を通じて不法滞在の事実を知った場合、原則として通報しなければならないとされています。

ただし、例外として「通報によって本来の業務に大きな支障が出る場合」には、通報しなくてもよいケースもあります。

企業・一般人に通報義務はないが注意が必要

一方で、企業や一般の個人に対しては、不法滞在者を通報する法的な義務はありません。

そのため、必ずしも通報をしなければならないわけではありませんが、不法滞在や不法就労の問題は社会的な影響も大きく、企業として無関係ではいられないテーマです。

特に採用や雇用の場面では、「知らずに関与してしまう」リスクがあるため、単に通報の有無だけでなく、日常的な管理体制を整えることが重要になります。

企業が注意すべきは「不法就労」の管理

企業にとって最も注意すべきポイントは、不法滞在の通報よりも「不法就労を発生させないこと」です。

たとえば、在留期限が切れている外国人を雇用してしまった場合や、就労が認められていない業務に従事させた場合、企業側が責任を問われる可能性があります。

こうしたケースでは、「不法就労助長罪」に該当するリスクもあるため、採用時の確認や在留期限の管理を徹底することが欠かせません。

外国人の不法滞在はどこに通報する?具体的な方法

不法滞在の可能性がある外国人を見かけた場合、「どこに連絡すればいいのか分からない」と迷うケースも少なくありません。

ここでは、実際の通報先と方法について、企業担当者の視点で整理します。

入管への通報方法(電話・メール・窓口)

不法滞在に関する情報提供は、最寄りの出入国在留管理庁(入管)で受け付けています。

主な通報方法は以下の通りです。

  • 地方出入国在留管理局の窓口に直接行く
  • 電話で連絡する
  • 公式サイトの情報受付フォームから通報する

企業として対応する場合は、事実関係を整理したうえで、できるだけ具体的な情報を伝えることが重要になります。曖昧な情報では対応につながらないケースもあるため注意しましょう。

警察への通報方法(交番・110番)

不法滞在や不法就労が疑われる場合は、警察への通報も可能です。最寄りの交番に相談するほか、緊急性が高いと判断される場合には110番通報も選択肢となります。

ただし、緊急性が低い場合は、まずは入管への情報提供を検討するケースが一般的です。

匿名通報は可能?注意点も解説

不法滞在の通報は、匿名で行うことも可能です。「身元が特定されるのが不安」という場合でも、一定の配慮がされています。

また、警察では匿名通報ダイヤルといった仕組みも用意されており、匿名での情報提供が可能です。

ただし、匿名の場合は情報の信頼性が判断しにくいため、対応が進みにくいことや、後述する謝礼金の対象外になるケースが多い点には注意が必要です。

参考:情報受付|出入国在留管理庁

不法滞在の通報で謝礼金はもらえる?

不法滞在の通報に関して、「謝礼金がもらえるのか気になる」という方もいるかもしれません。実際に制度は存在しますが、すべての通報が対象になるわけではありません。

報償金制度の概要(最大5万円)

不法滞在の通報に関しては、入管法に基づく「報償金制度」が設けられています。これは、通報した情報をもとに退去強制処分が行われた場合、通報者に対して報償金が支払われる可能性があるというものです。

金額は最大で5万円とされています。ただし、公務員など職務として通報を行う立場の人は対象外となります。

実際にもらえるケースはごく一部

制度自体はあるものの、実際に報償金が支払われるケースは非常に限られています。通報内容が具体的かつ正確であることに加え、その情報が摘発や退去強制につながる必要があるためです。

単に「不法滞在の可能性がある」といった曖昧な情報では、報償金の対象になることはほとんどありません。

謝礼目的での通報は現実的ではない

報償金はあくまで制度上の仕組みであり、通報の主な目的は不法滞在の防止や適正な入管行政への協力にあります。実務上は、謝礼を前提に通報を考えるケースは少なく、「結果として支払われる可能性がある」程度に捉えておくのが現実的です。

企業としても、謝礼の有無ではなく、適切な対応を取ることを優先することが大切です。

【企業向け】不法就労助長罪とは?知らないとリスクになるポイント

外国人の不法滞在に関する対応で、企業が最も注意すべきなのが「不法就労助長罪」です。

通報の有無よりも、「不法就労を発生させていないか」が問われるため、採用や雇用管理に関わる担当者は必ず理解しておきましょう。

不法就労助長罪とは

不法就労助長罪とは、働くことが認められていない外国人を雇用したり、不法就労を助長する行為を行った場合に適用される犯罪です。

「本人が不法滞在だった」といったケースだけでなく、企業側の確認不足や管理不備によっても成立する可能性があります。

そのため、「知らなかった」という理由では免れない点に注意が必要です。

企業が処罰されるケース

企業が不法就労助長罪に問われる代表的なケースには、以下のようなものがあります。

  • 在留期限が切れていることに気づかず雇用していた
  • 就労が認められていない在留資格の外国人を働かせた
  • 留学生のアルバイトで、週28時間の上限を超えて働かせた
  • 資格外活動許可の範囲を超えた業務に従事させた

これらは意図的でなくても、確認や管理が不十分であれば責任を問われる可能性があります。

罰則内容(罰金・懲役)

不法就労助長罪に該当した場合、企業や担当者には厳しい罰則が科されます。

具体的には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(もしくはその両方)が定められています。

さらに、企業としての信用低下や採用活動への影響など、実務面でのダメージも小さくありません。

こうしたリスクを避けるためにも、採用時だけでなく、雇用後も継続的に在留資格や在留期限を確認する体制を整えることが重要です。

【採用時に必須】在留カードの確認ポイント

外国人を採用する際は、在留カードの確認が欠かせません。不法就労を防ぐうえでも、最初のチェックが大切です。

ここでは、企業担当者が押さえておきたい確認ポイントを紹介します。

在留カードで確認すべき項目

在留カードでは、主に以下の項目を確認します。

  • 在留資格(どのような活動が認められているか)
  • 在留期限(いつまで滞在できるか)
  • 就労の可否(就労制限の有無)

特に注意したいのが「就労制限」です。たとえば、留学生の場合は原則として就労不可ですが、「資格外活動許可」がある場合に限り、週28時間以内のアルバイトが認められています。

採用時には、「働けるかどうか」だけでなく、「どの範囲まで働けるか」まで必ず確認しましょう。

偽造・不正カードの見分け方

在留カードの確認では、内容だけでなく「カード自体の真偽」にも注意が必要です。

具体的には、以下のような点をチェックします。

  • 顔写真と本人が一致しているか
  • 文字や印字に違和感がないか
  • 有効期限が改ざんされていないか

一見して判断が難しい場合もあるため、少しでも不自然に感じた場合は慎重に対応しましょう。

オンラインでの真偽確認方法(入管)

在留カードの真偽は、入管の提供する確認サービスを利用することでチェックできます。

たとえば、出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」では、カード番号を入力することで、有効なカードかどうかを確認できます。

採用時だけでなく、更新のタイミングなどでも定期的に確認を行うことで、不法就労のリスクを抑えることにつながります。

参考:在留カード等読取アプリケーション/失効情報照会 サポートページ

外国人雇用でトラブルを防ぐための注意点

外国人の不法滞在や不法就労を防ぐためには、採用時の確認だけでなく、継続的な管理体制を整えることが重要です。

ここでは、企業として押さえておきたい基本的なポイントを整理します。

採用時のチェック体制を整える

まず重要なのは、採用時の確認フローを明確にしておくことです。

在留カードの確認を担当者任せにするのではなく、「誰が・どのタイミングで・何を確認するのか」をルール化しておくことで、見落としを防ぎやすくなります。

また、ダブルチェックの体制を取り入れることで、確認漏れのリスクをさらに減らすことができます。

定期的な在留期限の管理

在留資格や在留期限は、採用時だけ確認すればよいものではありません。

雇用後も、更新期限を把握し、期限切れが発生しないよう管理する必要があります。

たとえば、以下のような対応が有効です。

  • 在留期限を一覧で管理する
  • 期限が近づいたらアラートを出す
  • 更新手続きの状況を定期的に確認する

こうした仕組みを整えておくことで、不法滞在・不法就労のリスクを抑えることができます。

社内教育・マニュアル整備

外国人雇用に関するルールは、現場の理解が不足していると形骸化しやすいものです。

そのため、採用担当者だけでなく、現場の責任者や管理職にも基本的な知識を共有しておくことが重要です。

具体的には、以下のような取り組みが考えられます。

  • 在留資格や就労制限に関する社内研修
  • 確認手順をまとめたマニュアルの整備
  • トラブル時の対応フローの明確化

日常的に確認・共有できる環境を整えておくことで、属人化を防ぎ、安定した運用につながります。

まとめ

外国人の不法滞在に関する通報は、入管や警察を通じて行うことができますが、企業にとって重要なのは「通報」そのものではなく、不法就労を未然に防ぐことです。

在留カードの確認や在留期限の管理を怠ると、知らないうちに不法就労助長罪に問われるリスクもあります。

採用時のチェック体制や継続的な管理の仕組みを整え、制度に沿った適切な雇用を行うことが、企業としてのリスク回避につながります。

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